「この前草刈りをしたのに、もうこんなに生えている…」
あっという間にパネルよりも背が高くなった雑草に困っていませんか?
もしくは、炎天下で草刈りをしたのにすぐに元どおりになってうんざりされた方も多いのではないでしょうか。
実は、雑草対策は適切な下準備の必要性といくつかのコツを知らないと、すぐにまた雑草だらけのジャングルになってしまうでしょう。
なぜなら、雑草は多くの方が想像しているより遥かに強い繁殖力と生命力を持っているからです。
「たかが雑草でしょ」と思っていると、導入費用を無駄にしたり、追加で多くの費用が必要になります。そして何より、あなたの貴重な時間が浪費されてしまいます。
それでは、どのような雑草対策をすれば、無駄な追加費用を抑え、炎天下の草刈りから解放されるのでしょうか。この記事では、主に次の4つについて、実例の写真付きでわかりやすく解説しています。
①適材適所の太陽光発電所の種類を知る
②雑草対策の選び方・組み合わせの具体例を知る
③雑草対策の落とし穴を知る
④雑草が太陽光発電所に与える5つの悪影響を知る
最後まで読んで、有効な雑草対策の組み合わせと、簡単な注意ポイントを理解すれば、雑草による悩みや維持管理費用の削減にぐっと近づけるはずです。
また、外注費用の目安も記載していますので、これから太陽光発電を設置する方にも、すでにお困りの方にもお役に立てるはずです。
太陽光発電所以外の土地(お庭や遊休地、空き地)で雑草対策を検討されている方も関係がある内容ですので、ぜひお読みください。
この記事の目次
秘訣① 雑草が太陽光発電所に与える5つの悪影響を知る
背丈が伸びた雑草の影によって発電量が下がるのは、みなさんご存知の通りです。
しかし、雑草が太陽光発電所に与える悪影響は他にもたくさんあります。
この章では、知らないうちに損失が発生しないように雑草が与える5つの悪影響を発生頻度と発電所への影響度を添えて注意点を紹介します。
※★の数は相対的なもので、厳密なデータではありません。また、★が少なくても十分に気をつけるべき内容です。
1-1.パネルに悪影響|ホットスポットの発生→発電量低下
発生頻度 | ★★★★☆ |
---|---|
影響度 | ★★☆☆☆ |
伸びた雑草の影が太陽光パネルの故障原因となる場合があります。
それでは、どのようにして故障原因となるのかをご説明しますので、まずは次の2枚の画像を比べてみてください。
【図A】伸びた雑草によりパネルに影がかかっている様子 |
【図B】サーモグラフ 影の部分が86.7℃まで上昇している |
太陽光パネルの至近距離で雑草が影を作ると、影が電気の抵抗となり、発熱します。
短期間であれば、大きな影響はありませんが、その状態が続くと「ホットスポット現象」※となり、パネルの故障の原因となりえます。
※ホットスポットとは、発電していない部分が抵抗となって発熱する現象です。
ホットスポットになっているかどうかは、図Bのようにサーモグラフで撮影するか触れてみないとわかりません。(パネルに素手で触れるのは危険です)
雑草が原因のホットスポット現象は、一般的なパネルメーカーでは製品保証の対象外となり、故障した場合の修理・交換費用は自己負担となります。
1-2.パワコンに悪影響|内部浸入→故障・不具合の発生
発生頻度 | ★★☆☆☆ |
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影響度 | ★★★★☆ |
雑草により、パワーコンディショナが故障することがあります。
隣地から侵入したクズに覆われたパワコン
通常、パワーコンディショナは水没や雑草の侵入を防ぐためにも地面から1〜2mあたりの高さに設置をしています。
しかし、雑草の中にはススキやセイタカアワダチソウのように1m以上の背丈になるものも珍しくありません。
また、ツタやクズのように蔓性の雑草は、架台や引き込み柱を支えに伸びてパワコンにたどり着きます。
排熱用のファンがあるタイプのパワコンでは、ファンからパワコンの内部に雑草が侵入し、不具合が発生する場合があります。内部に侵入すると、ショートして火災が発生する可能性もありますので、あなたの土地だけでなく、周辺の土地にも蔓性の植物がないか確認しておく必要があります。見つけた場合は、長期戦を覚悟しましょう。
どれだけ初期費用を抑えたくてもパワコン周りには、雑草対策が必須です。
1-3.設備全体に悪影響|景観悪化→周辺住民からの苦情
発生頻度 | ★★☆☆☆ |
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影響度 | ★★★☆☆ |
雑草が生えっぱなしの太陽光発電所は景観が非常に悪くなります。
景観が悪くなると、隣地の方や自治会から苦情が入ることが多々あります。
太陽光発電は、20年間の長期事業なので、出来るだけ近隣の方々とは良い関係を続けたいものです。
景観が悪くなるまで放っておけば、隣地に雑草が侵入して迷惑をかけることにもなります。その苦情がストレスとなってしまうかもしれません。
何より、景観が悪い発電所は、「人が立ち入ってない」証拠でもありますのでゴミを不法投棄されたり、泥棒の被害に会う可能性も高まります。
【注】改正FIT法(平成29年4月)により、20kW以上の地面設置の太陽光発電には、「標識の掲示」が義務化されました。
事業者の名前や住所などを記載することに加え、電話番号を記入しなければならない場合もあります。
そのため、景観が悪いと、事業主であるあなたへクレームの電話がたくさんくるはずです。
1-4.ケーブルに悪影響|ネズミやヘビ等の害獣の住処
発生頻度 | ★☆☆☆☆ |
---|---|
影響度 | ★★★★☆ |
雑草が膝丈くらいの高さになると、動物(ネズミやヘビ)の住処になってしまう可能性があります。
ネズミは、ケーブルなどの配線を噛んだりして機器を損傷させることがあります。
傷ついたケーブルは漏電や火災の原因となります。
ヘビは、茂みを好みます。あなたが設備に立ち寄った際に足を咬むかもしれません。多くのヘビは無毒ですが、そもそも咬まれてしまう環境を作ってはいけません。
1-5.事業自体に悪影響|漏電→火災
発生頻度 | ★☆☆☆☆ |
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影響度 | ★★★★★ |
雑草が生えていると、万が一漏電した場合に引火して火災が発生してしまう場合があります。
パワコンの漏電から延焼した太陽光発電所
経済的な損失であれば、取り返すこともできます。しかし、隣家などに燃え移って人的な被害が出た場合は、取り返しがつきません。
発生確率は低いですが、莫大な損害が発生しますので絶対に避けなくてはいけません。
1章のまとめ たかが雑草と侮るなかれ
雑草がもたらす悪影響を紹介しましたが、中には太陽光発電事業そのものが破綻するような場合もあります。
おそらくあなたが想像していた以上に、雑草リスクがあったのではないでしょうか?
草が生えていることよりも、雑草が伸びることで発生する影響(損害)を認識することが大切です。
雑草対策には、様々な方法がありますので、次章で紹介していきます。
秘訣② 適材適所の雑草対策の種類を知る
雑草を防ぐには、次のいずれかを満たす必要があります。
①雑草を抜き取り続ける
②雑草を刈り取り続ける
③雑草を枯らし続ける
④雑草を発芽させない
いずれも、一回限りではないところがポイントです。
雑草対策を導入するときの非常に重要なポイントは「導入する雑草対策方法について、正しく理解する」ことです。
メリットやデメリットはもちろんのこと、管理方法を知っておく必要があります。
本章では、もう少し具体的な雑草対策を紹介します。
それぞれ写真や特徴も記載しています。
方法 | 手間 (自分で行う場合) |
費用 (外注時の目安) |
注意点 |
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草むしり (手取除草) |
★★★★☆ | ¥1,000〜/h | 単価が面積ではなく時給になる場合が多い。技量により差が出るため、きちんとした契約が必要。広い面積には不向き。 |
草刈機 (機械除草) |
★☆☆☆☆ | ¥100〜/㎡ | 草刈りに慣れている人でも、太陽光発電設備には慣れていない場合が多い。ケーブルの切断や飛び石によるパネル破損に注意。費用は草丈、集草、処分の有無で異なる。 |
除草剤 (化学除草) |
★☆☆☆☆ | ¥100〜/㎡ | 除草剤の選び方(生えている雑草と有効成分)について知識が必要。また、除草剤の使い分けで結果に大きな差が出る。近隣土地への配慮が必要。 |
防草シート (雑草制御) |
★★★☆☆ | ¥800〜/㎡ | 使用するシートの性能・品質で雑草抑制機能や耐久年数に大きな差が出る。 |
砕石 (雑草制御) |
★★★★★ | ¥400〜/㎡ | 砕石が小さすぎたり、厚く敷きすぎたりすると砕石層の中に落ちた雑草の種子が発芽して繁茂する最悪の状態になる。 |
グラウンドカバー (生物除草) |
★★★☆☆ | ¥800〜/㎡ | 植栽のノウハウが必要。特に植栽前の下準備が出来ていないと効果が落ちる。 |
ヒツジ (生物除草) |
★★★★★★★★ | ¥50万〜/500㎡ | 飼育にあたって遵守すべき法律も多く、定期的な健康診断や、雑草以外の飼料や飲み水も必要。 |
2-1.草刈り(機械除草)
草刈機を使って行うポピュラーな除草方法です。
※草刈機は使い方によっては、怪我や事故のもととなります。はじめて草刈機を使う場合は、6時間程度の有料(1万2千円程度)の講習を受けることをおすすめします。
外注費用の目安 | 100円前後〜/㎡(面積と草丈によって大きく変わる・集草作業費用は別の場合が多い) |
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2-1-1.草刈り除草向きの太陽光発電所
草刈機による除草は、こんな人におすすめです。
・低圧の太陽光発電所(概ね1000平米以下で2〜3日でできる広さ)
・定期的(年4回程度)に草刈りをすることが苦にならない人
【注意ポイント】:草刈機で除草作業を行う時に、機器の損傷に気をつけましょう。
・ケーブルを切断してしまう
・架台を傷つけてしまう
・草刈機のキックバック
などが発生してしまう可能性があります。
これらのトラブルを避けるために→ 回転刃(ブレード)ではなくナイロンカッターを使いましょう
草刈りは、年に最低4回程度は行う必要がありますので、20年間で考えると最低80回は除草作業をする必要があります。
例:700㎡の太陽光発電所の場合
1年の費用:700㎡×50円×4回=140,000円
20年間の費用:140,000×20=2,800,000円
最低料金で外注した場合の金額です。
ご自身でされる際は外注費用は発生しませんが、その分の労力・時間を使います。
2-2.除草剤
除草剤を使って雑草を除草・制御する方法です。
除草剤にも様々な種類があり、目的・予算・雑草の種類・雑草の状態に応じて使い分ける必要があります。
まずは、基本の2種類として、茎葉処理型の除草剤と土壌処理型の除草剤の使い分けを確認しましょう。
種類 | どんなタイミングで使うのか |
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茎葉処理剤とは、雑草の葉や茎にかけることで効果が現れるタイプの除草剤です。
30〜60cm前後の草丈に散布します。 除草剤の成分は、葉や茎から吸収されるので、一般的には効き目が早い(即日〜7日ほど)ものが多く売られています。 伸びている雑草に使用するものですので、雑草が生えていない土地に予防目的で散布しても効果はありません。 薄めて使うもの(希釈剤)と、すでに薄めてあってそのまま使えるもの(AL剤)があります。カルピスの原液とカルピスウォーターのようなイメージです。 |
|
土壌処理型の除草剤は、今から生えてくる雑草を予防する目的で使用します。 草が既にに生えている場所には効果がほとんどないため、使用してはいけません。 |
2種類の除草剤を適切に使い分けることで、本来の効果を発揮することができます。
使用にあたっては商品ラベルを熟読のうえ、自身の判断と責任において適切な用量用法で使いましょう。
【注意1】近隣の環境(農地・住宅・井戸・排水・傾斜地etc.)や天候・風向きなど十分な配慮が必要です。
【注意2】よく失敗するパターンは「薄めすぎる」ことです。商品ラベル通りの散布量にしましょう。
【注意3】含有成分が重複する複数の除草剤を使用する場合は年間の使用上限回数ご注意ください。
外注費用の目安 | 50円〜/㎡(面積と草丈・除草剤のランクで大きく変わる・集草作業費用は別) |
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2-2-1.除草剤向きの太陽光発電所
・低圧〜高圧の太陽光発電所
・年2〜3回程度の除草剤の散布作業が苦にならない
・除草剤の使用で近隣からクレームが入る可能性が低い
【注意ポイント】
除草剤を使用する場合は以下の点に気をつけましょう。
・近隣に影響を与えるかどうか
・使用する除草剤を正しく選定する
・メーカー推奨量を守って使用する
例えば、隣が田んぼで作物を作っている場合、除草剤が染み出して悪影響が出てしまうことがあります。
そもそも、選択制除草剤を使えば、作物に悪影響を与えることがありませんが、隣地の方が感情的な部分で拒絶反応を感じてトラブルに発展する危険性があります。
20年間の外注費用を考えると、草刈り機の外注と同じく、高額な費用が発生します。
外注の場合、使う除草剤や濃度によって金額が大きく異なります。
【天候次第で効果が変わる】
①液体タイプの場合
液体タイプの除草剤を散布する場合は、快晴の日の午前中に散布しましょう。散布後に、雨が降ると茎葉に付着した薬剤が雨で流れてしまい、効果が弱くなるためです。地面に落ちた薬液はすぐに分解されるので効果はありません。
②粒剤タイプの場合
粒剤タイプの除草剤を散布する場合は、雨の翌日がおすすめです。粒剤が地面に染み込みやすいためです。そして、散布する次の日が雨が降らない日に散布しましょう。粒剤が地面に染み込む前に、雨で流されると効果が弱まります。
液体タイプでも粒剤タイプでも、適切なタイミングで散布しないと、効果が発揮できません。
たとえスケジュールを組んでいても、無理して決行せず、改めてスケジュールを組みましょう。
除草剤の種類の選び方や使い方を詳しく解説した記事を公開しました。
除草剤を検討されている方はぜひご一読ください。
2-3防草シート
防草シートを使って雑草対策をする方法です。
防草シートといっても、数多くの種類があります。
中にはすぐに劣化したり、雑草対策の効果が低かったりする製品もありますので、しっかりと選定を行う必要があります。
外注費用の目安 | 500円〜/㎡(使用する製品によって大きく異なります) |
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2-3-1.防草シート向きの太陽光発電所
・ある程度初期費用がかかったとしても、その後の管理を楽にしたい
・定期的な管理が難しい場所に設置している
2-4.砕石
砕石で雑草を制御する方法です。
しかし、砕石だけでは雑草対策の効果としては低いです。
理由は、砕石の間に飛来した雑草の種が発芽したり、地中から隙間を狙って雑草が顔を出すためです。
また、砕石の下に雑草の種が残っている場合は、雑草が生えてきます。
外注費用の目安 | 200円〜/㎡ |
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【注意ポイント】
砕石を使用する際は以下の点に注意しましょう
・砕石単体では防草効果が低いため、防草シート等を併用する
・1度砕石を敷いてしまうと、失敗した場合に次の雑草対策の方法が限られてしまう
・夏場に地面が高温になるので、発電ロスが発生する
2-5.コンクリート・アスファルト
敷地一面をコンクリートで覆って雑草を抑制する方法です。
雑草対策の効果は非常に高いですが、コンクリートの隙間などに砂などが溜まると雑草が生えます。
外注費用の目安 | 10,000円〜/㎡ |
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2-5-1コンクリート・アスファルト向きの太陽光発電所
・他の雑草対策に比べてかなり割高でも管理をしなくて良い状態にしたい。
【注意ポイント】
コンクリート・アスファルトを検討する場合は以下の点に注意してください。
・他の雑草対策に比べて高額な費用がかかる
・20年後に土地利用が限られる(畑などに復帰するのは困難です)
・排水経路を計画した上で行う
太陽光発電は投資目的で行うため、多くの費用が発生するコンクリートやアスファルトはお勧めしません。
もっと安く同じ目的を達成することができますので、他の方法を検討してみてはいかがでしょうか。
2-6.グランドカバープランツ(生物除草)
雑草対策としてグランドカバープランツを植栽する方法です。
グランドカバープランツは防草効果だけではなく、景観保持や土壌保護等の効果があります。
また、地表温度を下げることによって太陽光発電所の発電損失を軽減することができます。
夏場は地表温度が70度程度に上昇しますが、グランドカバープランツは40度程度まで温度を抑えることができます。
外注費用の目安 | 600円〜/㎡ |
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2-6-1.グランドカバープランツ向きの太陽光発電所
・頻繁に雑草の管理を行いたくない
・景観を良くしたい
・発電所が高温になるのを避けたい
【注意ポイント】
グランドカバープランツを行う検討する場合は以下の点に注意してください。
・環境によって育たない、育ちにくい場所がある(温度や土質、施工店のスキル)
・上手く育てるために、管理が必要(刈り込み、植栽初期の水やり)
2-6-2.おすすめのグランドカバープランツ「クラピア」
ミドリスでは、グランドカバープランツの「クラピア」をおすすめしています。
クラピアについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
2-7.ヒツジ等の動物による除草(生物除草)
ヒツジを飼育して除草を行う方法です。
一頭の目安 | 50,000円〜/頭 最低2頭から |
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その他 | 500,000円〜/所 小屋・飼育箱・水場・飼料・岩塩・柵 |
2-7-1 ヒツジ向きの太陽光発電所
・イメージアップ
・話題作り(ローカルニュースなどに)
・企業のPR効果
【注意ポイント】
ヒツジの飼育は以下の理由によりお勧めできません。
・生き物なので、放置というわけにはいきません。(動物は病気を隠すためこまめな体調管理が必要)
・買っておしまいのものではないので、寿命が尽きるまで面倒をみる必要があります。
・雑草が生えない時期は、餌やりが必要です。
・羊が食べない草は刈り取る必要があります。
2-8.架台の背を高くする
架台の背を高くすることも雑草対策の一つの方法です。
例えば、地面から40cmの高さにパネルがある太陽光発電所と、1mの高さにパネルがある発電所では、雑草による悪影響を受けるスピードが異なります。
雑草はぐんぐんと成長しますので、40cmの高さはあっという間に到達します。
地面から少しでも高くすることで、雑草による悪影響を減らすことができます。
注意点としては、架台の高さを高くすると架台の量が増えて、コストが上がります。
2章のまとめ 適材適所の雑草対策
雑草対策の方法は「適材適所」ということを理解しておきましょう。
代表的なものは、防草シートですが、土地や周辺の状況、状態によって最適な雑草対策が異なります。
そのため、最初から防草シートしか検討しなかったり、業者がおすすめする理由だけで雑草対策を決めてしまうと、失敗してしまう可能性があります。
「自分の土地にあった雑草対策選び」をすることで、雑草対策の成功率が格段と上がり、雑草で悩まされることが減るでしょう。
秘訣③ 雑草対策の選び方・組み合わせの具体例を知る
まず、雑草対策の基本フローを見てください。
3-1.雑草対策の基本フロー(草丈1m未満の場合)
目安として草丈が1m未満の場合は、下の図のように5つのステップで雑草を退治しましょう。
1mまたはパネルよりも背が高くなっている場合では、除草剤がパネルに付着したり目に入る恐れがあるので先に刈り込むことをおすすめします。
STEP① | 【茎葉処理型】除草剤で「根」まで枯らす |
STEP①の目的は3つあります。
⒈地下部を枯らす=「根」を枯らす
⒉地上部を枯らす=「茎葉」を枯らす
⒊草刈りを楽にする(枯れることでゴミの体積が減る)
除草剤を使う際の注意ポイントは
・雨の日に散布しない(除草剤が雨で流れてしまい、効果がなくなってしまいます。)
・希釈量を守る(薄めて使うと除草剤の効果が発揮できません。)
2週間後、現地に行き、十分に枯れていない場合はもう一度液体タイプ(茎葉処理型)で念入りに除草剤を散布する
STEP② | カリカリに枯れたら草刈機で刈り倒す |
雑草が枯れているので、生木を刈るよりも格段と楽にできます。
地上部が枯れていても、「根」がいきている場合がありますので、散布後最低でも1〜2週間は時間をおきましょう。
根元までしっかりと刈りましょう。
STEP③ | 【土壌処理型】の除草剤で発芽を防ぐ |
草刈りをして地上部が綺麗になったら、土壌処理型の除草剤を散布します。
なぜなら地表部が一見きれいになったとしても、見えない地下部には、発芽を待つ無数の雑草の種子や茎がいるからです。
土壌処理剤を散布することで、成分が土壌に移り処理層を作ります。処理層にある雑草の根が除草成分を吸収し枯らすことができます。
今から生えてくる雑草を抑えるには最適です。
STEP④ | 防草シートを敷設して発芽を防ぐ |
下処理が完了したら防草シートを敷設します。
防草シートを敷設するときは、十分に重ねしろを確保します。
ミドリスでは、重ねしろは15cm以上確保してシートを敷設しています。
雑草は強力なので、重ねしろが少ないとシートの隙間からすぐに生えてきてしまいます。
STEP⑤ | 年に2回程度様子を見に行く |
雑草対策を施した後、放置してはいけません。
なぜなら雑草は非常に強力な生命力を持っているからです。
一度の処置で、あとは何もしなくて良い雑草対策というものはありません。
面倒かもしれませんが、定期的に様子を見にいくことで、シートの劣化や外部からの雑草の侵入を早期に発見できます。
早期に発見できれば、当然、対策費用も少なくなります。必ず定期的な観察をしてください。
すべての工程を実行することで、最大限の効果を発揮することができます。
例えば、ステップ①の工程を省くと2つのデメリットが発生します。
⒈草が元気なので、草刈りが大変
⒉根っこが生きているので、防草シートが浮いたり、間から雑草が生えてくる
この5つのステップで省いて良い工程は一つもありません。
最初に多少の手間をかけることで、太陽光発電の運用期間中、しっかりと雑草対策の効果が発揮されるでしょう。
「除草剤散布+草刈り」は必須です。
防草シートやグランドカバーを行う場合でも、まず下処理で「除草剤散布+草刈り」を行います。
雑草がほとんどない状態で、雑草対策を行うことで、成功率を高めることができます。
雑草対策をする場合、太陽光発電所のような広い面積の土地は、基本的に外注することが多いと思います。
業者に依頼する時には、雑草対策の方法も重要ですが、「その業者がどのような工程で雑草対策を施すか」が一番重要です。
雑草対策は、経験値が非常に重要です。
業者の経験値を見極めるためにも、工程を質問してみましょう。
秘訣④ 雑草対策の落とし穴を知る
雑草対策には「落とし穴」があります。
それは「あなたや業者が雑草対策と思っていたことが実は有効な手法ではない可能性がある。」ことです。
同じ手法をとっても、経験や知識により、結果が大きく異なります。
4-1.防草シートで失敗するパターン
原因 | 具体例 | 予想される結果 | 対策 |
---|---|---|---|
工法によるもの | 重ねしろが少ない | ・隙間から雑草が生えてくる ・架台基礎(杭やコンクリ)の周辺から雑草が生えてくる |
・重ねしろは必ず15cm以上確保する ・隙間をシート用のテープで覆う |
事前の除草不足 |
・シートが浮いて雑草が生える ・シートを突き破り雑草が生える |
・除草剤で地上部の雑草と地中部の根を枯らす ・土壌処理型の除草剤を散布し、地中の種子の発芽を防ぐ ※特に、セイタカアワダチソウ、チガヤ、ササ、スギナ、竹、ススキ、ヨモギ、ツル、クズ、ツタ等が生えている場合は要注意 |
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砕石が厚い 砕石が細かい |
・砕石層で雑草が繁茂する | ・砕石を薄く敷く ・砂混じりや細かい砕石は採用しない ・砕石の上で繁茂した場合はその上から再度シートを敷設する |
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製品によるもの | ・耐候性が低い ・引き裂き強度が低い(破れやすい) ・繊維の密度が低い |
・数年で劣化し、再び費用が発生する ・地中の種子が発芽しシートを突き破る ・地中の種子が発芽しシートの繊維の間をすり抜ける ・シート上に飛来した種子が発芽し繊維の隙間から根を張る |
・求める状態(例:3年は草刈り不要な状態を維持する等)に適した強度のシートを採用する ・用地と用地周辺に生えている雑草を調べてそれに耐えうるシートを選定する |
環境によるもの | 凹凸が激しい土地 | 吹き溜まりに砂が堆積し雑草が繁茂する | ・土地を可能な限り均し、極端な凹凸を無くす |
隣接する土地に蔓性の植物が生えている | 蔓性の植物が発電所に侵入し、フェンスや、架台、引き込み柱に絡みつき発電量の低下を招く | ・侵入してくる面に除草剤をかけておく ・定期的(特に春〜秋)に様子を見る ・望みは薄くても隣地の地主に協力を求める ※ツル・ツタ・クズは長期戦を覚悟しましょう ※根茎に打ち込む専用の除草剤があるが、根茎を探し当てることが大変 |
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紫外線での劣化 | 劣化により、繊維がボロボロになり雑草が侵入する | ・耐候性の強いシートを採用する ・紫外線を防ぐ目的で安価なシートを重ねる ・砕石を薄く敷設する |
防草シートを使用する時には「固定ピン」にも気を配る必要があります。
みなさんあまり気にされることはありませんが、ピン選びに失敗してしまうと防草シートも失敗してしまいます。
雑草対策に防草シートを検討されている方はぜひご覧ください。
4-2.砕石だけで雑草対策を行って失敗するパターン
太陽光発電所の多くに雑草対策として砕石が使用されています。
しかし、下の写真を見てください。
雑草対策として砕石を敷いた太陽光発電所 | |
---|---|
防草シートを敷かずに砕石を敷いた場合、2年ほど経過すれば上の写真のようになる可能性が高いです。
雑草は生命力がとても強く、砕石の間に積もった埃や砂に根を張り、ぐんぐんと成長します。
また、砕石を浅く敷いてしまうと、下の土に根を張り、雑草が繁茂してしまいます。
「多くの人が雑草対策として砕石を使用しているので、自分もそうしよう」
「業者が勧めているから砕石にしよう」
という安易な考えで導入してしまうと、太陽光発電の運用中に大変な思いをしてしまうかもしれません。
また、1度砕石を敷いてしまうと、万が一失敗してしまった場合に、次の雑草対策の方法が限られてしまいます。
もし、それでも砕石を使用するのであれば、砕石の下に耐久性に非常に優れた防草シートを敷設してください。
4-3.除草剤の間違った使い方をして失敗するパターン
除草剤で失敗しやすいパターンは2つあります。
①「土壌処理型」「茎葉処理型」の違いがわからず散布して失敗
既に繁茂している雑草に対して、「土壌処理型」の除草剤を使用してもあまり効果はありません。
逆に、繁茂していない状態の土地に「茎葉処理型除草剤」を散布してもこれから生えてくる雑草に対しては効果がありません。
タイプの違いを理解せずに使用すると、かけた費用が無駄になってしまいます。
②液剤の希釈量を間違えて失敗
「もったいない」という思いから必要以上に薄めて使用しても効果がありません。
節約したつもりが、再度除草剤を購入することになってしまってむしろ高くついてしまいます。
③散布量の密度にムラが発生する(密度のムラ=無駄)
除草剤を散布するときに、密度のムラが発生したことはないでしょうか?
除草剤の散布が可能な200㎡以上の環境であれば、土壌処理型の粒剤を撒く際には間違いなく「散粒機」が除草の効率をあげてくれます。
散粒機には、エンジン式、電池式、人力式があります。手動は手が疲れるので、扱いやすい電池式をおすすめします。
散粒機を使うメリットは2つあります。
1.時間の短縮・人件費の削減
散粒機を使用すると、1時間あたり35kg程度撒くことができます。
例えば、「ネコソギメガ粒剤」は、多年草イネ科雑草が生えている場合は1㎡あたり60g(メーカー推奨量で一番濃い密度)散布します。
つまり、1時間あたり500〜600㎡程度散布することができます。
500㎡〜600㎡というと、50kW規模の太陽光発電所面積に相当します。
2.散布密度のムラ(=無駄)なく撒くことができる
粒剤を人力で撒くと、必ずムラが発生します。
下の画像のように、散粒機を使用することで、均一に散布することができます。
密度にムラが出ているので、同じ使用量(g数)でも効果に差が出る。 |
散粒機を使用することで、ムラなく除草剤を散布することができる。 |
いくら効果が高い除草剤を使っても、選び方と使用方法が間違っていれば、期待した効果を得られません。
「正しい除草剤の選び方・使い方」を守って費用対効果を最大まで引き出しましょう。