「ヒメイワダレソウって植えていいんですか?」
グランドカバー販売店の私たちミドリスには、このような質問が寄せられます。
「植えてはいけない」というのは「法律的な話」と「ヒメイワダレソウの特性の話」に分けられます。
結論からお伝えすると次のポイントになります。
・法律的には植えても良いが、生態系に被害を与えないように管理が必要
・繁殖力が強く、種子を飛ばす特性があるので、要注意
簡単に言うと、コントロールできない(手に負えない)から植えてはいけないということです。
今回は、ヒメイワダレソウがなぜ植えてはいけないかと言われるのか、徹底的に解説します。
【この記事でわかること】
・ヒメイワダレソウが法律的には植えても問題ない理由
・デメリットから見る、植えてはいけない理由
・ヒメイワダレソウの失敗事例
・ヒメイワダレソウとクラピアの決定的な違い
ヒメイワダレソウを検討している方はぜひご覧ください。
この記事の目次
1.ヒメイワダレソウは「重点対策外来種」だが、法律的には植えても良い
「ヒメイワダレソウは植えてはいけない」と言われる理由の一つが、環境省に重点対策外来種に指定しているからです。
環境省が公開している「生態系被害防止外来種リスト」の中で「重点対策外来種」に掲載されています。
環境省生態系被害防止外来種リスト:https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/files/list.pdf
生態系被害防止外来種リストの目的
“・多くいる外来種の中から、特に注意な外来種を明確にすることはとても重要です。
リスト掲載種について、適切な行動を呼びかけることで、生態系等への被害を防止することを目的としています。”
引用元:環境省生態系被害防止外来種リスト
法律的には「重点対策外来種」は罰則等の対象ではありませんが、管理には十分注意が必要です。
法律的に罰則がなくても、「重点対策外来種」であれば慎重な管理が必要です。
環境省発行の資料でも重点対策外来種は「甚大な被害が予想されるため、対策の必要性が高い」と明記されています。
資料の中では、外来種被害への対策も記載されています。
【外来種被害予防三原則】
・悪影響を及ぼすおそれのある外来種を「入れない」
・飼育・栽培している外来種を「捨てない」
・すでに野外にいる外来種を他地域に「拡げない」
実際に世界では、ヒメイワダレソウにより、次のような問題も発生しています。
“オーストラリアでは、古くに持ち込まれた品種が野生化し、1990年代後半からは環境に大きな被害を与えています。
実際にオーストラリアやフランスでは「侵略的植物種」に指定されています。”
引用元:国立研究開発法人 科学技術振興機構 (J-STAGE) https://www.jstage.jst.go.jp/article/weed/59/1/59_31/_pdf
重点対策外来種であるヒメイワダレソウは、植えたりするのは法律的な規制はありませんが、非常に慎重に扱うべき植物であることをしっかりと覚えておきましょう。
2.外来種ヒメイワダレソウが「植えてはいけない」と言われる理由(デメリット)
この章では、ヒメイワダレソウが植えてはいけないと言われる理由を解説します。
2-1.種を飛ばし周囲の土地へ侵入する
ヒメイワダレソウは種子を拡散して個体を増やしていきます。
文献では次のように記載されています。
オーストラリアにおける研究によると,ヒメイワダレソウ の種子繁殖に関する特性は次のとおりである。
種子生産量は環境条件に依存するが年間 936–60,153 粒 /m2 と多く,種子は主に洪水で散布される(Macdonald 2008)。
散布後種子は永続的シードバンクを形成し,発芽に不適な環境条件下では約10年間生存可能とされる(Macdonald et al. 2006; Macdonald 2008)。
ただし,種子の休眠性については不明点が多い。
※一部抜粋
参考文献:ヒメイワダレソウ(Phyla canescens (Kunth) E. Greene)の わが国における逸出および問題雑草化への可能性とその対策 *著者:川口佳則・沖 陽子
このように、種子の生産量が多い上に、適切な環境ではなく発芽しなかった種子は10年程度、生きている可能性があります。
例えば、お庭にヒメイワダレソウを植えて、種子が流失した場合、10年経過してから周囲でヒメイワダレソウが発芽する可能性もあります。
適切な環境であれば、10年待たずともすぐに発芽をしますので、隣地の方とのトラブルになる可能性もあります。
特に河川などが近くにある場合は要注意です。
文献内にも記載があった通り、オーストラリアでは洪水で大流失したことで大きな被害となりました。
お庭の近くの河川に流失して、下流域の生態系に影響を与えない為にも、河川付近での植栽は控えましょう。
2-2.繁殖力が非常に強く、他の土地に侵入する
ヒメイワダレソウは、繁殖力が非常に強いです。
匍匐茎(ランナー)の断片からでも、すぐに栄養繁殖で成長します。
隣地に仕切りがない場合には、注意が必要です。
あっという間にヒメイワダレソウが侵入してしまう可能性があります。
ただ、この繁殖力は見方を変えれば、グランドカバーとして優秀な側面でもあります。
お庭を早く緑の絨毯にすることができる為です。
ヒメイワダレソウがお庭に選ばれる理由として多いのが「安く・綺麗に・早く」緑のお庭にできるためです。
2-3.他の植物に被害をもたらす
ヒメイワダレソウは成長スピードが早いため、お庭に植えると他の植物に悪影響を与える可能性があります。
他の草花に巻き付いたり、庭木の幹に巻き付いてしまうことがあります。
特に背丈が低い草花の場合は、ヒメイワダレソウが覆ってしまって枯らしてしまうことがあります。
適切な管理をすれば、他の植物へ悪影響を与えることはありませんが、成長スピードが早いので、注意が必要です。
2-4.一度植えると駆除が大変
ヒメイワダレソウは一度お庭に植えると、駆除に苦労します。
はじめにお伝えしておくと、しっかりと除草剤を何度も使用すれば、駆除は可能なので、ご安心ください。
ただ、根っこをしっかりと伸ばしているので、引っ張っても簡単に除去できません。
また、この記事で記載した通り、種子は最大で10年間生き続けますので、除去したと思ってもまた生えてくる場合があります。
そのため、何度か除草剤を撒いて完全に枯らす必要があります。
3.ヒメイワダレソウの失敗事例
この章では、ヒメイワダレソウの失敗事例を紹介します。
3-1.お隣さんの敷地まで繁殖してトラブルになった
一番多いトラブルが、隣地への侵入です。
ヒメイワダレソウは「栄養繁殖」と「種子繁殖」で個体を増やしていきます。
隣との敷地境界付近に植えると、侵入してしまう可能性があります。
栄養繁殖での侵入についてはお隣との間に、高さ30cm程度の仕切りを設置することで、防ぐことができます。
ただ、種子が飛ぶのは防ぐのが難しいです。
ヒメイワダレソウを刈り込む際に、種子が飛ぶこともあります。
種子は発芽率も高いので、飛ばしてしまうと、隣地の方とのトラブルの原因になる可能性がありますので注意が必要です。
3-2.お庭の他の植物が枯れてしまった
お庭でヒメイワダレソウを植える際には、他の植物を枯らす可能性があります。
特にお花類は、背丈も低いので、生育が旺盛なヒメイワダレソウが巻き付いてしまい、枯らすケースがあります。
また、庭木などの幹に絡まって、管理の手間が多くなることもあります。
お庭に他の植物を植えている方は、しっかりと管理できる状態で導入しましょう。
3-3.駆除したと思ったら生えてえきた
ヒメイワダレソウを植えてから、数年後に駆除する方も一定数います。
よくあるのが、表面上だけ刈り取って暫くしたらまた生えてくるというトラブルです。
ヒメイワダレソウは、刈り取るだけでは駆除できません。
匍匐茎の破片があれば、それが成長して大きくなりますし、種子があれば発芽します。
そのため、除草剤で何回も枯らす必要があります。
除草剤は「茎葉処理型」と「土壌処理型」を用いて枯らします。
土壌処理型除草剤は、土の中まで効果を発揮し、種の発芽を抑制する効果があります。
一度使用すると、商品の効果期間にもよりますが、1ヶ月から9ヶ月間の間は、他の植物を植えることができません。
除草剤は「茎葉処理型」と「土壌処理型」の組み合わせで使いましょう
ヒメイワダレソウを駆除したいからといって、とにかく除草剤を撒けば良いというわけではありません。
「茎葉処理型」の除草剤は、今生えている雑草にすぐ効果がありますが、これから生えてくる雑草を抑える効果がありません。
「土壌処理型」の除草剤は、種の発芽を抑制してくれますが、今生えている雑草への効果は低いです。
まずは「茎葉処理型」の除草剤で今生えている部分を駆除し、「土壌処理型」の除草剤で発芽を抑制するという組み合わせで効果的に駆除しましょう。
成分が気になる場合は食品由来、自然由来の除草剤で駆除しましょう
ご家族やペットの関係で、除草剤の使用に抵抗がある場合は、食品由来や自然由来の除草剤を使いましょう。
商品によって効果の持続期間が違うため、パッケージをよく確認してから使いましょう。
4.在来種のイワダレソウ改良種「クラピア」であれば、種を飛ばさず安心
イワダレソウ(岩垂草)は沖縄などの日本国内に自生している在来種です。
外来種のヒメイワダレソウと外見が似ており、「イワダレソウ」として販売されていても中身は「ヒメイワダレソウ」である場合があります。
クラピアとは、種をほとんどつかないように在来種イワダレソウを改良された園芸品種です。
もちろん、迷惑植物にも該当せず、公共工事でも採用されている植物です。
近年では、芝生に替わるお庭のグランドカバーとして大人気です。
【クラピアの9つのメリット】
1.密に広がるから他の雑草を抑制できる
2.早いスピードで成長する
3.多年草なので、寿命が長い
4.緑の絨毯で地表温度を下げる
5.可愛い花が咲き、緑と花を楽しめる
6.種がないので、増えすぎた時の管理もしやすい
7.地盤保護、土壌流出防止に役立つ
8.育てやすい!
9.他のグランドカバープランツと比べて管理の手間が少ない
もちろん、ヒメイワダレソウも共通するメリットは多くありますが、一番は「種の飛ばさない」という安全性です。
近隣の生態系への影響もなく、安心してお庭に植えることができます。
注意点としては、定期的な管理は絶対必須なことです。
これは他のグランドカバープランツに共通する部分ですが、植物である以上、管理は必要になります。
主な管理は次の通りです。
【クラピアが広がるまでのお手入れ】
【元気なクラピアを維持するための管理】
このような管理が必要になります。
少しでも「クラピアっていいな」と思った方は、次の記事をご覧ください。
最新版・クラピアとは?お庭の雑草対策で大人気のグランドカバーを徹底解説 厳選写真40枚!成長したクラピアがキレイに庭一面に広がった事例集「私のお庭で導入する場合、いくらくらいかかるのだろう?」と疑問に感じた方向けに、クラピアの費用を簡単に計算するフォームがございます。
クラピアお見積りフォーム|必要数・シート面積・費用が簡単にわかるミドリスのクラピア販売サイトを紹介します。
クラピアにおすすめの肥料の販売サイト一覧
クラピアに併用するシートの販売サイト一覧
5.植物の管理が苦手な方におすすめの雑草対策
ここまで記事を読んで、「やっぱり植物って管理が大変そうだな」と感じた方もいらっしゃるかと思います。
そこで、最後に植物を使わない雑草対策を紹介します。
次の記事はさらに詳しく解説していますので、ぜひブックマークをお願いします。
お庭のおしゃれな雑草対策6選|失敗しない選び方とDIYの費用を解説5-1.防草シート+人工芝で景観+耐久性の雑草対策
人工芝は、ここ数年で導入数が増えた流行りの雑草対策です。
簡単に常緑のお庭維持できるのが魅力です。
人工芝を選ぶメリットは次の通りです。
①人工芝は簡単に、常緑のお庭を実現できる
②人工芝は植物のように、維持管理の手間が発生しない
③防草シートと人工芝を組み合わせることで雑草を長期間防ぐことができる
④日当たりに関わらずどのようなお庭でも人工芝を導入することができる
⑤人工芝は子供やペットが遊んでも汚れにくい
⑥雨の日でも水溜りができにくい
費用の目安
防草シート:400円(平米)
人工芝:1200円〜2000円(平米)
合計:2000円(平米)程度※雑費含む
※10平米のお庭の場合:20000円
維持管理方法
・定期的にブロワーなどで掃除をする
・人工芝やピンなどが抜けていないかチェックする(台風時など)
・よく歩く場所は劣化が早いので、数年で交換をする
人工芝について詳しく知りたい方は次の記事をご覧ください。
お庭に人工芝を選ぶ6つの理由|導入前の注意点とデメリットを解説【2023年7月】人工芝の人気おすすめ10選|スペック5つを徹底比較!5-2.防草シート+砂利で景観+耐久性+防犯の雑草対策
防草シートと砂利の組み合わせはお庭で人気の雑草対策です。
人気の理由は次の通りです。
①「防草シート」と「砂利」のお互いのデメリットを補うので防草効果が高い
②耐久性が高くなる(劣化しにくい)
③様々な種類から砂利(タイル・レンガ)を選んでおしゃれにデザインできる
④お庭の維持管理コストがほとんど発生しない
⑤砂利(砕石)雑草が生えても簡単に抜くことができる
費用の目安
防草シート:400円(平米)
砂利:2000円〜6000円(平米)程度
合計:3000円〜9000円(平米)程度※雑費含む
※10平米のお庭の場合:30000円〜90000円
維持管理方法
・防草シートに吹き溜まり(砂が堆積していないか)がないか確認する
・固定ピンの穴から雑草が生えていないか確認する
・重ねしろの部分から雑草が出ていないか確認する
・よく歩く場所がシートの擦り切れがないか確認する
・台風【強風】で防草シートがめくれていないか確認する
お庭の雑草対策で、砂利+防草シートが気になる方は次の記事をご覧ください。
防草シートと砂利|おすすめの理由と選び方、DIY施工の注意点を解説【写真付き】おしゃれな庭砂利14選|綺麗なお庭にするおすすめの商品と種類の選び方まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、「ヒメイワダレソウが植えてはいけない」と言われる理由を解説しました。
簡単にまとめます。
ヒメイワダレソウは法律的には植えても良い理由
環境省から「重点対策外来種」に指定されているが、所有管理の罰則はない
「植えてはいけない」と言われる理由(デメリット)4つ
1.種を飛ばし周囲の土地へ侵入する
2.繁殖力が非常に強く、他の土地に侵入する
3.他の植物に被害をもたらす
4.一度植えると駆除が大変
ヒメイワダレソウの失敗事例
1.お隣さんの敷地まで繁殖してトラブルになった
2.お庭の他の植物が枯れてしまった
3.駆除したと思ったら生えてえきた
イワダレソウ改良種「クラピア」であれば、種を飛ばさず安心
クラピアはヒメイワダレソウと異なり、不稔性で種を飛ばさないので、安全に導入できる
この記事があなたのお役に立てれば幸いです。