雑草対策にグランドカバーが良いと聞いたけれど、言葉の意味やあなたにとってのメリットがわからないとお困りではありませんか?
グランドカバーは、植物を利用した雑草対策の一つですが、実はメリットは雑草対策だけではありません。
この記事では、これから雑草対策をしようとご検討中の方のために、グランドカバーやグランドカバープランツという言葉の意味や、雑草対策以外のメリットについて一つずつ具体例をあげて解説しています。
記事の最後には、グランドカバーの導入前に絶対に知っておくべき注意点も解説しています。
最後まで読んでいただければ、あなたの雑草対策にグランドカバーが適切かどうかのヒントが得られるはずです。
これから雑草対策をご検討される方の管理コスト減のきっかけとなれば幸いです。
グランドカバーを基本から徹底解説した記事を公開しました。
合わせてお読み下さい。
1.グランドカバー(グラウンドカバー、英:ground cover)とは?
まずは、グランドカバーとは何かを知っておきましょう。
グランドカバー(ground cover)とは、むきだしの地表面を意図的に植物で覆うことです。多くの場合、雑草の抑制という目的を中心として、美観・景観の向上、土壌の流出防止など副次的な効果・目的を期待されて導入します。正しくは、グラウンドカバーと言います。
道端のグランドカバーの例
1-1. グランドカバープランツ(グラウンドカバープランツ、英:groud cover plants)とは?
次に、グランドカバープランツとは何かを確認しておきましょう。
グランドカバープランツ(ground cover plants)とは、グランドカバーに使われる植物のことです。地表を覆う植物なので、「地被植物」や「下草」とも言われます。グランドカバープランツは、特定の種類があるわけではなく定義も曖昧です。
多くの場合、ひざ下あたりまでの高さに管理できる植物の総称だと思っていただけるとイメージしやすいかもしれません。
グランドカバープランツという総称は、それぞれの植物が持っているそれぞれの特性が、問題点の解決に繋がる場合に成り立ちます。
身近なグランドカバープランツの例
玉竜(タマリュウ)…根締めや侵入防止、景観向上で人気のグランドカバープランツ。
芝桜(シバザクラ)…主に景観向上を目的に採用される人気のグランドカバープランツ。見る人を楽しませる。
1-2. グランドカバーの対象は、庭から壁面緑化までさまざま
グランドカバーの対象は、庭や公園、遊休地などの平面ばかりが頭に浮かびますが、実はそれだけに限りません。
堤防や開拓された法面(のりめん)も対象となります。
もう少し広い意味では壁面も対象となります。例えば、東京駅周辺には、下の画像のような壁面緑化の事例が豊富にあります。
更には、フェンス、アーチ、ポールなどの工作物も対象となります。
グランドカバーとひとくちに言っても対象範囲(活用範囲)がとても広いことがお分りいただけたでしょうか。
1-3.ミドリスおすすめのグランドカバープランツ「クラピア」
私たちがおすすめするグランドカバープランツは「クラピア」です。
初めて耳にする方も多いかと思いますが、芝生より早く育ち管理がしやすいことが特徴です。
クラピアを初めて知る方向けに解説した記事がありますので、ぜひご覧ください。
2.グランドカバーのメリット10選
グランドカバーは目的が重要です。何故なら、グランドカバーは問題を解決するための選択肢の一つに過ぎないからです。
例えば「1,000平米の土地に繁茂した雑草を抑制したい」だけであれば、草刈りや除草剤、防草シートなど他の雑草対策でも達成できるでしょう。しかし、「毎年の雑草対策費用も削減したい」「景観も良くしたい」といった具合に複数の課題があれば、「草刈り」が最適な解決策とは限りません。
副次的なメリットも知っておくことで、一石二鳥どころではなく三鳥、四鳥と問題解決につながる可能性があります。
2-1. 鑑賞目的、景観対策
グランドカバーでは、視覚的なメリットも期待できます。
例えば、大面積に美しいラベンダーやシバザクラなどグランドカバープランツを植栽すれば、大いに見応えのある観光名所にもなります。経済的な効果も得られるでしょう。また、地表そのものが荒れて見苦しい場合の景観づくりも兼ねています。
デメリットとしては、大面積に高単価のグランドカバープランツを植えていけば、初期コストも比例して上がっていくことです。
2-2. 除草費用の軽減、雑草雑木の繁茂予防、刈込作業の軽減
地表を密に覆う背丈の低いグランドカバープランツを採用すれば、地中の雑草の種の発芽や、飛来する雑草の種子の発芽を抑制することができます。
お庭や遊休地、駐車場、公園、または売電中の太陽光発電施設では、雑草は文字通り毎年発生する悩みの種となります。特に、土地の管理を始めた最初のうちは雑草の成長速度に驚くことでしょう。
下の画像は、雑草に覆われた太陽光発電所です。設置時に生えていなかった雑草が半年でここまで伸びています。
一方で、こちらは地被植物クラピアによってグランドカバーされた太陽光発電所です。
雑草は、虫歯と似ています。虫歯になってから問題を先送りにすればするほど、治療は大変になり費用もかさみます。雑草の場合も、伸びた雑草の処分費用と除草費用がかさみます。
まだ大丈夫、と思っているうちの対処が必要です。
2-3. 庭木・庭石の根締め
グランドカバーを街路樹や公園の樹木や庭石の下に施すことで趣のある風景を演出できます。下草(したくさ)として古くから用いられる用途です。
また、グランドカバープランツがあることで、植木の根の周りへの踏み入れを抑止することができます。過度な踏み固めを回避でき植栽の健康的な成長が期待できます。
2-4. 土壌流出抑制・ 法面(のりめん)の崩壊・侵食防止
グランドカバープランツの茎葉が法面の表面を風雨から守り、根が地中を張ることで土や石を固定する効果があります。勾配の大きさや、地質によりますが、土壌流出の防止を目的に活用されます。
日本の人口は世界で10位の多さと言われていますが、国土の3分の2は山地です。その為、道路や鉄道の社会インフラや居住地を確保するには、山地も開発する必要があります。開発された土地の中には、そのまま傾斜地(法面、のりめん)として残る場合もありますが、地表をむきだしのまま放置すれば風雨で侵食されるおそれがあります。
2-5. 泥はねの防止
グランドカバーがされていれば、泥はねを防いでくれます。また、地中の根が地中を巡ることでぬかるみの緩和が期待できます。
地表のぬかるみは、雨に限りません。冬の霜柱でもどろどろとぬかるみます。
2-6. ほこり・砂の飛散防止・乾燥地の防止
黄砂の季節や乾季に、せっかく干した洗濯物が砂だらけになっていたり、学校のグラウンドや公園、造成地、砂浜の近くで目も開けられない思いをしたことはありませんか。
グランドカバーをすれば、飛砂や埃を植物の茎葉が抑えることで近隣への迷惑も軽減できます。
砂の他にも、埃が舞い眼病の元にもなってしまいます。海岸沿いであれば植生可能な植物は限られますが、クラピアのように塩害耐性のある植物もあります。
2-7. 気温上昇対策(ヒートアイランド現象、温暖化の緩和)
グランドカバーは気温上昇対策に有効です。
緑地では植物による蒸散が行われ、植物の蒸散は気温の高い日中が盛んになります。この蒸散作用により地表面を冷やし、日差しによる熱で温まった地表面からの大気加熱を抑えるのに役立ちます。
反射熱の低減(ヒートアイランド現象の緩和)、温暖化対策
東京駅の壁面緑化の例
ヒートアイランド現象の要因は、高層ビルの存在と人工的な排熱、そして緑地の減少が挙げられます。環境省が平成24年度に示した『ヒートアイランド対策ガイドライン(pdfファイル2.4MB)』にも地上緑化、屋上緑化の有効性が示されています。
太陽光発電の熱損失の軽減効果(反射熱の低減)
真夏の地面が何度くらいまで上昇するか、正確に答えられる人は少ないでしょう。下の画像は、クラピアでグランドカバー中の地表を真夏の午後にサーモグラフィーで撮影したものです。
画像の赤い箇所は相対的に高温で、青い箇所は相対的に低温であることを表しています。これを見ると、裸地の最高温は70度にも達していることがわかります。夏に犬の散歩をすると、アスファルト部で肉球が火傷をしたり熱中症になると注意喚起がされるのも納得です。一方で、クラピアが繁茂している箇所は36度でした。その差は実に30度以上。驚きの結果です。
結晶系太陽光パネルの多くは、表面温度が25度(基準状態)から1度上がるごとに発電効率が0.4%ずつ下がっていく特性があります。発電効率の低下は、売電収入の低下に直結するので太陽光発電所のオーナーにとっては重要な問題です。
2-8. 二酸化炭素(CO2)の吸収固定
植物は、光合成により二酸化炭素を吸収し固定できます。固定することにより一時的に大気中のCO2を減らすことができます。
植物はCO2を固定して自らを形成する
植物が成長しきって寿命が訪れ、材木として焼却されたり朽ちて微生物に分解され土に還るとCO2が放出されるのでやがてCO2の収支は釣り合うことになります。
2-9. 耕作放棄地・休耕田の地力保持
クローバーやヘアリーベッチ等のマメ科のグランドカバープランツには、地力回復・増強の効果があります。根粒菌との共生により空気中の窒素を固定化することから、緑肥植物として活躍しています。
2-10. 心理的な効果 美しく広がる緑は見る人の心を癒す
グランドカバーには心理的な効果もあります。美しく広がる緑の景色に、心と体が癒されたことはないでしょうか。植物の香り、感触、見た目どれも大切な要素です。
緑色が人に与える印象を挙げてみましょう。
落ち着き、安心感、おだやかさ(平和、平穏)、くつろぎ、自然(環境)、さわやか、新鮮さ(若さ)
…などなどさまざまです。
3.まとめ 失敗しないためのグランドカバー 導入前の3つの注意点
グランドカバーの効果についてお分りいただけたでしょうか。うまく利用すれば、いくつものメリットが得られるグランドカバーですが、相手は植物。あなたの目的と選んだ植物の特性にミスマッチがあれば、目的は達成できません。
こんなはずではなかった…と、時間と費用の無駄を回避するために絶対に抑えておきたい注意点を順番に挙げてまとめとします。
3-1. 何故グランドカバーをしたいのか?目的をはっきりとさせること
目的次第では、そもそもグランドカバー以外の雑草対策の方が良いということもあります。より良い選択をするためには、あなたがグランドカバーで得たいものを明確にするか、現在の状況のどんなポイントに苦痛を感じているかを明確にする必要があります。
3-2. 現場(地域、土壌、日照量、周辺環境)に適した特性を持つグランドカバープランツを選定すること
グランドカバープランツは生き物です。熱帯魚が北海道で生息できないように、植栽可能な地域があります。他にも日照量、土壌の湿度・硬度・pH、積雪量、風量、塩害などへの耐性を考慮の上で選択する必要があります。植栽方法も同様です。
3-3. グランドカバープランツの管理方法を事前に理解しておくこと
植物には管理が必要です。グランドカバーを実践しても、十分に繁茂するまでは、隙間から雑草が生えてくることも十分に考えられます。また、全面被覆が達成した後も、周りの環境によっては大掛かりな手入れが必要になる場合もあります。その場合は、メンテナンスフリーに近い植物の選定や十分な下準備が必要です。
雑草対策は、グランドカバーに限りませんので、周囲の環境やかけられる手間や費用を総合的に考えて選びましょう。
3-4.他の人がどんなお庭づくりをしているのか生の声を交流サイトで知る
グランドカバーの目的や特性、管理方法を一人で調べて考えてもなかなか結論が出ないかもしれません。
そんな時は、他の人がどのようなお庭づくりをしているのか、生の声を参考にしたいですよね。
そこで、クラピアや芝生などのグランドカバープランツや、お庭づくりの交流サイトをオープンしました。
サイト名:『わたしのお庭』
URL : https://midoris.life
お庭の交流サイトとして、他の人がどんなお庭づくりをしているのかを見て、あなたのお庭づくりの参考にしてみましょう。
【参考図書・文献】
・「最新 グラウンドカバープランツ: 地被植物のデザインと緑化手法」近藤三雄(誠文堂新光社)
・「グラウンドカバープランツ―生育特性と利用方法の解説書」社団法人日本植木協会(財団法人 経済調査会)
・「マメ科被覆作物を利用した 土壌流亡の防止と地力の維持」鬼頭誠(琉球大学農学部 亜熱帯農林環境科学科)
・「地力維持におけるマメ科作物の機能に関する研究 」大門 弘幸 (大阪府立大学大学院農学生命科学研究科)
・「根粒菌ってすごい」佐藤孝(秋田県立大学生物資源科学部 生物環境科学科)